東雲家の庭。
季節はもう冬だと言うのに、その庭には桜が満開に咲いていた。
世間には知れ渡っていない特殊技能により、冬にも咲くことの許された世界に一本だけの冬桜。
12月24日。
この日、一つの命がこの世に生を受けた。
名は『春夜』
冬の夜でありながら、桜が満開に咲いている日に生まれた──。
──『春』の『夜』──
父親も母親も初めての子供にこんな能力が覚醒するとはこの時は知る由もなかった…。
初めての子ということもあり、それはそれは大切に育てられた。
将来、家も継いでもらわなくてはならない大切な息子。
幼少、小学生、中学生・・・
この頃から、自分の中に何か不思議な感覚が目覚めていた。
それはまだ確実ではなく、まだ「感覚」でしかなかった。だから、さほど気にもしていなかった。
──けれど、あの日
あの路地裏で出会ってから
力は目覚めた──
アイツを守る力が欲しかった。
そう望んだ時から…。
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